煙草とカセットテープの離婚

遠くにある文字は小声で話しているわけではない

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

いちごが潰れてから何日たったんだろう。古い電車に乗ってると、駅といえば馬の背中とか河川敷ばかりで、これじゃさすがに眠くなるよとあきれる。川は交互に左右から近づいてきたのに名前がなかった。だから右川、左川なんだねと知らない人が云いながら電車…

ひとつひとつは寿司なんだけど、全体で見ると何日も前の風呂に映ってた天井がこんな感じだった。魚をつくりだすことが意志になってしまったら、靴は片方ずつ脱げていって、それを踏んで通り過ぎるママチャリ、消防車、シマウマ。耳にあててからラジオだとわ…

封筒

屋上を貸してあげるよ、ってみんなに云われながら生まれてきたんだ。煙草のけむりが電車で、月が駅だった。旅に出たければ最初から手紙にそう書いたけど、じっさいは草の汁でつま先が汚れて、こすりつけた地面がサインになってただけ。荷物はいつまで待って…

十二月

あなたの反対側にも部屋があった。動物しかいない? 動物しかいない。壁にくっつけているところが黄色くなって、夜の窓みたいだと思ってから本を閉じたからね。読んだ人は誰も話さなかったけど、鳴き声の中に雪が降っているような生き物も、信じられてた。時…

セロテープでいいというのは嘘だったかもしれない。鳥に何度も追いかけられた坂を、きみは鍵のこわれた自転車で再生した気でいるね。音楽は自分から出るものだよ。ヘッドフォンはそれを吸収してあの表面の白い箱に渡してるだけ。手ざわりがなくなって落とし…

透明な傘で来たなんて、現実の図書館じゃないみたいだ。橋だって渡った。濁流が会いにいくのは相模湾だけど、冬だから雪だるまの絵が似合う紙になって貼られているところが壁。いいところが見たいよね、自分がハートで描かれるのはきっかけなんだ。理科が目…

三日前

コンビニのことがぼくらにもわかったから、睫毛をハサミでばらばらにして、自分を組み立てるように真剣に読ませてもらったよ。菜の花。いちじく。えんどう豆。靴に中敷きがわりにサラダも敷いてあって、山をのぼっていく風に自転車の絵の切手を貼って柵から…

ギプスちゃん

雲からなんでも取り戻せるよ、とギプスちゃんがいったことおぼえてる。ギプスちゃんは小学四年生、一年が二百年で計算すると地球なら八百年生。音速で来たことがある夏ならだいたい知ってるって。入道雲に写真を貼って「これがママだよ」って貝殻にいわせて…

深夜

髪型だね、みんなが花をもぎ取ったあとを「地面だから」といってかくしたがるのは髪型だけだ。手で変えてしまえる社会がきみにはあるのに、電車の窓でかくして友達と眺めてる深夜がはちみつの原材料で、ふたから公園へ鳩の足跡がつづいているからあの子は笑…

電車

ピザが焦げすぎてるか凍ってるかは自分の汚点に聞いて、と溝とガールスカウトは同時にさけんだって。重さを聞きそびれた集会所が、何個か月末に重なってる。曲がったアンテナに絡みつく麻紐に主張を託しながら老いていく、第五十一代ミス・鮮魚、その左右対…

理想

今のが流れ星なら、わたしにも同じような星があるから夜空に続いて明けていかなければならないね。流れ星の傘をさして新宿に出てきた男の子。その理想的な髪の黒さをあきらめて音楽のほうからうなずきかけているのを、れんげとさくらがあんなに咲かずに待っ…