煙草とカセットテープの離婚

遠くにある文字は小声で話しているわけではない

封筒

屋上を貸してあげるよ、ってみんなに云われながら生まれてきたんだ。煙草のけむりが電車で、月が駅だった。旅に出たければ最初から手紙にそう書いたけど、じっさいは草の汁でつま先が汚れて、こすりつけた地面がサインになってただけ。荷物はいつまで待っても荷物のままで、友達にも町にも見えなかったけど、封筒に爪で書いたような胸がさっきから星の中に生まれてきてるって、きみは自分のことのように恥ずかしそうに揺れた。灰皿はいくらでも降ってくることがわかってる。行かなければよかったと思う旅が、またしてみたいという表情だから。