煙草とカセットテープの離婚

遠くにある文字は小声で話しているわけではない

下着

孤島がきみの下着だと知って、どうしようかと思った。大浴場のドアがわからなくて、片っ端から壁に「ここですか?」と書いてたら知らない土地に来てしまった。汚い字が好きだから、くだものと前髪にも同じように書いて、窓に映った時計の文字盤と、似たような笑顔だったアイドルの背中にも、書いた。海がないから床に麦茶をこぼしたのかもしれない。高速道路を何年も走りつづけると、通り過ぎたことも気づかない小さな星に居間が増えていくんだろう。搬入されてくる本棚、帽子掛け、サマーベッドにシール痕があるのも、きみに会いたがってた魚たちのかたちだよ。ほんとうのバスは人なんか乗せない。太陽が壁に当たるとじゅうぶん行き先になるって、白い布が云うとまるで人間みたいだった。