煙草とカセットテープの離婚

遠くにある文字は小声で話しているわけではない

水中

私をしらべてから散歩に行ってくれたら、そのひろい道は竹垣に沿って折れ曲がり、つぼみだらけの木の枝、右にも左にも意識を畳んだ、パンフレット。馬のたてがみ。ヘッドフォン。気はたしかだと、四月の電柱に引っかかってる綿のシャツの、おかえりなさいって書いてある袖になら云えたのに、結局、硯の割れる音がした。反対されてる戦争はもう明るいよ、住宅街が舞台のレイプシーンを、気がつくと不愉快な雲が映ってしまうからという理由で、あのドラマはもう三度も撮り直してる。朝になって、袖を揺らす風に云わせてるのはあきれた話だから、髪がじゅうぶん長くなるまで時間をかけて泣いて、たおれたボーリングピンを思わせる生き物を、いつか水中で飼う相談をした。あんな高い所に階段があるのは久しぶりだな、空が南へ行くほど青くて、顔が染まってしまうほどだって気にしてたみたいなのに、地図は小さくて、町はもっと小さい。指がうごくと乗り物やけものが来たように見える、薄い道路の突き当り、その建物の裏! かんたんな挨拶をして別れて、自分の家族に煙草の箱が潰れてしまう話をきっかけに、雨が降り出した、傘はもう駐車場のどこかに埋もれてしまっている。