煙草とカセットテープの離婚

遠くにある文字は小声で話しているわけではない

しばらくバスが来ないから、月に行こう。それはロープウェイのかたちをした魂で、一人乗りだけどむりして一緒に乗ってしまった、午後三時。ちいさくなった工場がもう塩粒くらいしかつくれないサイズの銀色になってる。ぼくらが最初に傘を差した歩道を、どこまでもつづくキャベツ畑が追いかけるけど、そんなに途方もない歴史が必要だなんて山は思ってないよ。ただ崩されて学校とか、線路になってしまえばいい、そうつぶやいて三角州も応援してる。あの子に西新宿のロゴを頼もう、あの子にはピンクグレープフルーツのロゴ。見違えるほどきれいな袖のまくり方で、天窓から手を伸ばそうとしてるけど、さわれば行ってきたことになる旅なんて認めたくないな。旅だと思わなければいいんだよって、運命線とバスが同時に笑った。